御朱印で有名な埼玉県の九重神社で、真菰の歴史を学んだ
こんにちは。安藤です。今日は埼玉県川口市の「安行」というところに来ています。東京から荒川を越えて北に少し行ったところです。
そして、ここ安行にある九重神社には、真菰と深く関わっている宮司さんがいるとのことなので、お会いしてみようと思います。マコモ風呂も20年以上されているとのことです。
まずは、手水舎でお清めをして。
お参りします。
神様への御挨拶が終わりましたので、宮司さんに取材に向かいます。
初めまして。九重神社宮司の白石です。こちらこそよろしくお願いします。
この安行という街は、住宅地ですが、緑もたくさんあって豊かな街ですね。
そうですね、ここ安行は、台地や傾斜地など様々な植木を栽培できる環境のため、江戸時代から江戸の町の植木生産地として栄えました。現在では、「安行植木」として、日本だけでなく世界にも知られる植木産地となっています。
また当社も約400年前の江戸中期ごろに氷川社としてこの地に鎮座したとされております。明治時代には安行の大字九ヶ村にあった村の鎮守様が合祀され、社号を氷川社から現在の九重神社に改めました。そのため、当社には素盞嗚尊(スサノヲノミコト)を始めとし、計13柱の神々が祀られております。
13柱もの神様が祀られているんですね。御利益がたくさんありそうですね。
また、当社の主祭神、素盞嗚尊(スサノヲノミコト)は記紀神話において大国主命(オオクニヌシノミコト)の親神様と言われております。大国主命は皆さんご存知の出雲大社に祀られている神様です。
そうですね。出雲大社では毎年6月朔日に涼殿祭、別名「真菰神事」とも言われるお祭りがおこなわれています。
「真菰神事」は大国主命が夏服に衣替えをして出雲の森で暑さを避けられていたという故事に因んで行われる神事ですが、出雲大社の宮司である国造が、出雲の森から御手洗井まで移動する際に、境内地面に稲佐の浜の砂と真菰が敷かれ、その上を歩きます。
【参考】以前、リバーヴの菊池さんが涼殿祭に参加した時の動画
国造が踏んだ真菰には神威が宿るとされており、その真菰を持ちかえり家の神棚に祀ったり、お風呂に入れたりすることによって、無病息災で過ごせるという信仰が地元では古くから伝えられているそうです。
昔から真菰は地元の人たちの生活と深く結びついていたんですね。
そうですね。神事の際に国造が持つ白幣には出雲の森より降りられた神様が宿り、御手洗井まで還御される道中、不浄な地面に触れぬよう神聖な植物とされる真菰と清めの砂を敷くことにより穢れを祓い、その清浄な道の上を神様が行かれるのです。「菰」は神様が「籠る」と言う説があるように、古より全国の神社でも神具として用いられてきたのです。例えば、現在でもよく用いられるものに「薦」がございます。薦は真菰を編んだ敷物です。
こちらは神様にお供えする神饌の下に敷いたり、地鎮祭では祭壇の下に敷いたりするものです。薦を敷くことで清浄な場となり、そこに神様へのお供え物を置くことができるようになるのです。
私も地鎮祭に参加したことがありますが、確かに敷いてありました。
神社の年中行事に夏越の大祓という神事があります。夏越の大祓は、半年間の穢れを祓い清める神事で全国の神社で行われます。また、夏越の大祓と言えば茅の輪くぐりを思い浮かべる方がほとんどかと思いますが、残念ながら当社では茅の輪をご用意することが難しい状況にございます。
しかし、それに代わる何かが出来ないものかと試行錯誤していたところ、真菰は浄化の力を持った植物ですので、「祓の護符」として夏越の大祓で用いることができないかと考えたのです。そして真菰を原料にした「大祓特別御朱印」を頒布してみることになりました。
原料となる真菰はリバーヴさんからご厚意により御奉納いただくことができました。
そしてその真菰を神職がすべて手作業で御朱印用の和紙に奉製し、神前にて清祓いしたものをご用意致しました。
全てが手作業だったので、多くは作れなかったのですが、数量を限らせていただいて頒布したところ、大変好評ですぐに頒布終了となりました。
たしかに、神聖な真菰和紙でしたから、みなさん御朱印を希望しそうですね。
そうですね。当社には御朱印を受けにご参拝される方も多く、中でも、境内に大きな御神木があって、それを象った「御神木御朱印」も多くの方が受けにご参拝くださっております。
この御神木はスダジイといってシイの木の一種です。樹齢約500年といわれ、幹回りが6.5メートルあり、埼玉県のシイの木では一番太いとされており、川口市指定の保存樹木に選ばれています。上を見上げると、二本の木の枝が絡み合っています。
確かに上で絡み合っていますね。この木からは不思議なパワーをもらえそうですね。
そうですね。この御神木が500年もの間この地に倒れることなく存在しているのも、九重神社の神様のお陰あってこそです。一人でも多くの御参拝の皆様に、真菰の御朱印や、何かしらを通じて神様とのご縁を結んでいただき、神社という日本の伝統文化のすばらしさを伝えていけるように勤めてまいりたいと思っております。
最後に握手をしてお別れしました。
取材先
九重神社 http://kokonoejinja.jp/ |